混沌の2020年産2歳戦を振り返る

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はじめに

2020年産の世代も阪神JF、朝日杯FS、ホープフルSと、2歳G1が一通り終わって区切りがつきました。ホープフルステークスの結果にも出たように、2020年産は2019年産と比べて波乱が多い世代でした。今回は2020年産の2歳戦線を簡単に振り返りたいと思います。

波乱に満ちた2020年産世代の幕開け

ドウデュースが制した日本ダービーの翌週から、さっそく次のタービーに向けた新馬戦が始まりました。今年はサトノダイヤモンドやリアルスティールなど注目種牡馬が初年度産駒を送り出すということで、話題は多かったように思います。2歳新馬戦の開幕序盤からサトノダイヤモンド産駒、サトノクラウン産駒とサトノの種牡馬が勝ち上がりを記録。一方でリアルスティール産駒は初勝利が7月の最終週まで持ち越されることとなりました。

一方で2年目となるシルバーステート産駒からは注目馬が数頭出ました。宝塚記念デーの新馬戦ではカルロヴェローチェ、ゴッドファーザーがデビュー。カルロヴェローチェは新馬勝ちし、ゴッドファーザーは新馬勝ちこそならなかったものの、次走の未勝利戦でハナを切ってから上がり最速の10馬身差勝利を飾り、注目を集めました。ちなみに宝塚記念デーの新馬戦は結果として上位5頭が勝ち上がっており、いわゆる「伝説の新馬戦」と呼ばれるようなメンバーだったのかなと思います。

ただしここからが混沌でした。新潟2歳、札幌2歳はぼちぼち人気での決着ではありましたが、以後のレースは期待外れの結果が続きます。まずは野路菊ステークスで、勝ったのは2番人気のファントムシーフでしたが、単勝1.5倍の支持を受け、新馬戦の勝ちっぷりも目を見張るものがあったカルロヴェローチェが最下位に負けました。サウジアラビアRCでは単勝1.4倍のノッキングポイントが馬券外に沈み、9頭立て7番人気のグラニットが2着に割り込みました。デビュー戦を強いように見えた勝ち方をした馬がことごとく敗れていきました。

さらに特筆すべきは重賞です。有力馬が集結したアルテミスステークスでは、単勝1.4倍のリバティアイランドが、やや追い出しが遅れたのか2着に負けました。デイリー杯2歳は3番人気オールパルフェが優勝、1人気だったダノンタッチダウンは2着に敗れました。ダービー2着で天皇賞秋、有馬記念を制したイクイノックスを排出している東スポ2歳では、新馬戦を快勝したハーツコンチェルトが単勝1.8倍の1番人気で3着。また同レース2番人気だった同じく有力馬のダノンタッチダウンは2着、新馬戦快勝のフェイトは5着に沈み、結果的にレースを制したのは5番人気のガストリックでした。後述しますがガストリックはホープフルステークスで16着と、東スポ2歳の結果がいかに微妙だったかを表しています。他にも京都2歳では1番人気グランヴィノスが6着で、レースを制したのは5番人気のグリューネグリーンでした(ホープフルステークスで11着)。このように重賞戦線は混沌が続く状況で、クラシック候補の想定すらできませんでした。

一方でしっかり結果を出した馬もいます。前述のファントムシーフはもちろん、葉牡丹賞を快勝したミッキーカプチーノ、アイビーステークスを制したチャンスザローゼス、アルテミスステークスを買ったラヴェルなどは、前評判に劣らぬ内容で結果を出しています。

しかしそれ以上に評判馬が崩れた印象でした。ファンタジーステークスのリバーラ、京王杯2歳のオオバンブルマイなど人気薄が重賞を制するケースもよく見られました。また内容も何回か走ったら結果が変わるようなものが多い印象でした。力の差がはっきりと見えてこない分、個人的には消化不良感が多いシーズンでした。

2歳G1戦線

力関係が十分わからないまま迎えた12月。2歳G1戦線でも混沌が続きました。

2歳牝馬G1の阪神ジュベナイルフィリーズは1番人気リバティアイランドが勝利しました。3ハロン通過33.7というやや早めのペースを8番手追走。直線に向くと外目から他馬をすべて抜き去り1着で入線。アルテミスステークスではややスムースさを欠いて前をいくラヴェルを捉えられませんでしたが、G1の舞台で改めて実力を証明する形となりました。一方で2着以下は12番人気、10番人気、13番人気、16番人気と続く波乱で、人気上位馬は6番人気6着のドゥーラが最先着という結果でした。勝ち馬という観点からは1番人気の勝利ではありましたが、まだまだ波乱の様相は残したままの締めくくりとなりました。

続く2歳のマイルG1朝日杯フューチュリティーステークスはこれまでの混沌とした2歳戦線を否定するかのような1、2、3番人気決着でした。3ハロン通過34.1と阪神JFよりも落ち着いたペースのレースに。逃げた京王杯2歳勝者のオールパルフェを前に置いた1番人気ドルチェモアが直線進入早々に捉えると、そのまま入線。2番人気ダノンタッチダウンと3番人気レイべリングもゴール前ドルチェモアを猛追しますがわずかに届かず。0.1秒差に3頭がひしめく接戦となりました。これまでの過程や阪神JFの結果とは対照的に人気での決着。なんだかんだ2歳G1で勢力図は判明するのかと、このときは思いました。

そして最後の2歳G1ホープフルステークス、朝日杯の流れから固く決着するのだろうと考えていましたが、予想とは大きく異なる波乱決着でした。3ハロン通過36.1、5ハロン通過61.5と、2歳G1にしてもやや遅めのペース。さらに3コーナーからのペースアップもなく直線に入り、先行していたトップナイフとドゥラエレーデの追い比べに。最後はジリジリと脚を伸ばしたドゥラエレーデがトップナイフを交わして1着。14番人気の勝利でした。人気どころだったファントムシーフは直線スムースではなく4着、ミッキーカプチーノは大外が響いたのか5着まで。勝ち負けまではいかなかったものの、直線をスムースに進んだキングスレインが上がり最速で3着に潜り込みました。

現段階でのクラシック有力候補

3歳戦線はクラシック、マイル、牝馬クラシックと3つのカテゴリがあると認識していますが、マイルと牝馬クラシックの路線は一定勢力図が見えてきたように思いました。一方でクラシック路線はホープフルステークスの大波乱ではっきりとはわからなくなってしまいました。一方でホープフルステークス上位2頭を除くと意外に上位人気が固まっているということもあり、人気上位馬は力を出して上位に上がってきているとも考えることができます。となれば現時点でクラシック有力馬はある程度検討することができるのではないでしょうか。

クラシック路線はホープフルステークスで上位人気だったファントムシーフ、ミッキーカプチーノが挙げられるでしょうか。そのほかにもアイビーステークスを勝ったチャンスザローゼス、共同通信杯へまわったダノンザタイガー、野路菊ステークスで最下位だったカルロヴェローチェも見限れません。未勝利戦後行方不明になっているゴッドファーザーなど。ほかにも新馬戦で悪くない勝ち方をした馬が立て直してくることも期待できるレベル感なのかとも思います。

牝馬クラシック路線はリバティアイランドを中心にまわりそうです。一方で阪神JFで下位に沈んだ人気馬の立て直しがなければリバティアイランドで決まりになってしまいそうなので、復活に期待したいですね。マイルは朝日杯メンバーが中心になりそうですね。

終わりに

ひとことで表せば「カオス」な2020年産世代。とはいえ年が明ければまた3歳重賞が始まります。新生の登場にも期待したいですね。